評価されない大企業ヒラ社員への狂騒曲
この時期になると、大きな会社に勤めている人から、こういう愚痴を聞く。
「おれ、こんなに残業してるのに、給料安い」
「わたし、こんなにがんばって案件とってるのに評価されない」
「ぼく、こんなにコードかいてるのに、出世しない」
わかるわかるわかる!!!
僕も昔、同じことを言ってた!全く同じだ。
オッサンになったので、それが間違いと気づいた。あまりに、そういう愚痴をこぼす人にさいきん立て続けに5人ほど会った。
まず、君はすでに、負けている。
主語が「おれ」「わたし」「ぼく」という時点で負けている。
それだと一生ヒラだ。君らほど働かなくても、出世する人はもっといる。
そして、会社のために働いても出世はしない。
会社の為、イコール、評価でも出世でもない。
全てのビジネスは「おれ」ではなく、相手にメリットを出すかどうかだ。
目を閉じろ。
深呼吸をしろ。
まず、自分のことは、脳みそから捨てろ。
相手のことを考えよう。
相手とは、会社ではなく、君の評価を決めている個人だ。
たとえば、評価面談の相手が課長だったとする。
課長の気持ちを想像しよう。
徹底的に課長の気持ちを想像しよう。
自分のことは脳みそから捨てて、評価の決定権がある課長の気持ちを想像しよう。
相手は課長だ。課長だから、部長から、チームの目標の達成度合いに対してなんか言われたり、無理ゲーでもんやりした指示をされて、もんやりした資料作ったり、なんやかんや理由つけて稟議取ったり、出る必要のない会議に出たり、チーム編成考えたり、チームでの目標が達成できなかったら自分が悪くないのに文句いわれて、自分が悪くないのに、原因考えて報告して対策案考えたり、予算を出したり、消化したり、部下から文句いわれたり、社内の人間関係でどうとか、仕事多すぎるとか、たまに辞めたいとか言われたりしてるわけだ。実務をしている時間がどんどん減っていき、勤務時間も増えていく。
部署も大きくなって、何人か主任とかリーダークラスに昇進させたいとしよう。そうしないと、自分も楽できないっていうか、まともな時間に家に帰れなくなる。管理職は時間ばかり食うのだ。
そんな時にだ。
めちゃくちゃ忙しいのに、やりたくもない評価面談を業務の合間をぬってやるわけだ。君だけでなく、全員分面談するわけだ。面談が1時間としてメンバーが10人いたら10時間ほど使うわけだ。しかも、通常業務と並行してやるわけだ。
たとえば、昔のぼくを、想定しよう。
昔のぼくは、典型的なクレイジーコーダーで開発速度は早いけど、電話が鳴っても取らないし、遅刻はするが、残業はしまくるし、報告書は出さないし、たとえ報告書を出しても、Word嫌いなので図表がアスキーアート芸を駆使したテキスト形式でしか出さないし、会議中もコードを書いていて話を全然聞いてないし、頼んでもないのに、土日に会社に来てはコードを書いていて、本業と関係ないLinuxのカーネルのコードを解析していたりするし、そのくせ、「ぼく、こんなにコード書いてるのに、評価されない」などなどと言っている。
そんな現場の仕事しかしてない奴を出世させて、その課長の仕事がしやすくなるだろうか?
その時の課長の気持ちを徹底的に考えよう。
「こいつを主任にしたら、会議とかで一緒に打ち合わせする時間も増える。報告とか提案とか稟議書とかをお願いしたり、一緒に考える時も増える。部長との打ち合わせで同席することも増える。時には取引先と同席することも増える。外注先や開発メンバーを選定したり、スケジュールや仕様を決めたり、業務を割り当てたり、発注したり、重要な事項を決定させることもあるし、部長に出す資料も作ってもらったりもする。自分の業務時間も限界まで増えているので、そういったことを、いろいろ手伝ってもらいたい。」
そう、クレイジーコーダーや、オレオレ営業をリーダーや主任にしても、課長にとってメリットない。会社の為に働いているやつを出世させても課長にメリットないことも多い。
要するに、出世して経営者に近づけば近づくほど、現場の能力以外のモノが問われる。コミュニケーション能力やスケジューリング能力や管理能力や調整能力の割合が増えるし、上司の仕事の手伝いも増える。上司と一緒に仕事することが増える。
もっというと、単純に上司の好き嫌いで評価が決まることもある。だって、一緒に仕事するんだもん。
そこで、僕のような、クレイジーコーダーを主任とかリーダーに出世させたいか?ぼくのような、クレイジーコーダーと一緒に外注先の選定とか打ち合わせしたいか?クレイジーコーダーが作った資料を持って一緒に部長や取引先と打ち合わせしたり、開発メンバーや外注先の指示を任せたりしたいか?
むかしのぼくを客観的に思い出すと、絶対、出世させたくないし、重要な決定事項を任せたいと思わない。
仮に出世させたとして、リーダーにして、問題が起こったら、ボロカスに言われるのは自分だ。
「あいつをリーダーにしたのは誰だよ」
これを言われるとつらい。大きな会社だと、部下を評価する時、これを一番避ける人が多いと思う。
結果的に、部長にも部下にも文句を言われない人を選ぶ。
正直、6割の課長さんは、異端児でたまにホームラン級の結果を出す人より、そつなくヒットを出して、想定内の動きをして、ちゃんとコミュニケーションできて、そこそこできる人の評価をあげる。想定内の動きをしてくれる人のほうが、中間管理職として、仕事しやすい。
クレイジーコーダーを出世させるより、クレイジーコーダーを10人管理できる人を出世させたほうが会社としてパフォーマンスは高いこともある。さらに、そのほうが、課長にとっては仕事が楽だ。
目を閉じろ。
深呼吸をしろ。
まず、自分のことは、脳みそから捨てろ。
課長の気持ちを想像しよう。
まずは、そこからだ。
「おれ、こんなに残業してるのに、給料安い」
課長:残業しないでほしいなぁ。人件費の予算を越えると部長に怒られるし、サー残でも監査もうるさいし、俺の査定に響くよう。
「わたし、こんなにがんばって案件とってるのに評価されない」
課長:案件とってくるのいいけど、クロージングも全部やってくれないと、俺の仕事増えるだけだよなぁ。早く家に帰りたいんだよう。
「ぼく、こんなにコードかいてるのに、出世しない」
課長:コミュ能力なさそうだし、リーダーにすると問題ありそうなので、もうちょっと現場でコード書いていてほしいなぁ。
そんなわけで、大きな会社というものは、努力の方向を間違えると、仕事を一生懸命やっても、評価もされないし、出世もしないことが多いです。
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